司法書士が解説|登記簿謄本の読み方①『表題部』

前回は登記簿謄本の取得方法について解説いたしました。

今回からは、シリーズで『登記簿謄本の読み方』について解説いたします。
取得した登記簿謄本から権利関係を正しく読み取っていきましょう。

登記簿謄本(登記事項証明書)の構成

登記簿謄本見本

こちらの画像は登記簿謄本(登記事項証明書)の見本です。
登記簿謄本は主に、
表題部
②権利部(甲区)
③権利部(乙区)
④共同担保目録

という4つの項目で構成されています。
それぞれの持つ役割、読み取ることができる情報について項目ごとに見ていきましょう。

次の章から、今回のテーマである「表題部」についてご説明します。

表題部とは

不動産の物理的状況が記載されているのが表題部です。
「どこに存在し、どういう用途で使われ、どのくらいの大きさか」というような不動産の外見を記録している部分とお考えください。
表題部の内容は土地と建物でも大きく異なりますし、建物のなかでも戸建てとマンションで記載内容が異なりますので、不動産の種類に分けて表題部の内容を詳しく見ていきます。

土地の表題部

土地の表題部

上の画像は土地の登記簿謄本の見本から表題部の項目のみ切り取ったものです。
この表題部から読み取ることができる主要な情報は以下のとおりです。

所  在 特別区南都町一丁目
地  番 101番
地  目
※用語説明①
宅地
地  積 300,00㎡

MEMO

『地番』と『住所(住居表示)』はどう違う?

日本の住所には「地番」と「住居表示」という2つの表記方法があります。

「地番」とは土地1筆ごとに割り振られた番号で、法務局が定めているものです。
昔はすべての住所に土地の番号である「地番」が使われていました。
しかし、本来地番は建物の場所を特定するためのものではないため、地番から住居を特定することは難しく、市街化が進むにつれて郵便配達などに支障をきたすようになりました。

そこで誕生したのが「住居表示」制度です。
住居表示は、建物に割り振られた番号で、市町村が定めています。
「○○市○○町(○丁目)○番○号」の形式で表記されるもので、一定の法則に従って番号が割り振られるため地番よりも分かりやすく、住所として住居を特定することに適しています。

このように住所が「住居表示」にかわったとしても「地番」がなくなることはありません。登記上、土地の場所や権利の範囲を表すのは昔とかわらず「地番」です。

都市部では積極的に「住居表示」が実施されているため、登記簿謄本に記載されている「地番」と「住所」が異なることが多いのです。

建物の表題部

戸建ての場合

戸建て表題部

上の画像は一戸建ての登記簿謄本の見本です。
この登記簿謄本の表題部からは、主である建物(母屋)の『居宅』と附属建物※用語説明②である『物置』という2つの建物の情報を読み取ることができます。

所  在 特別区南都町一丁目 101番地
家屋番号※用語説明③ 101番
主である建物の種類 居宅
主である建物の構造 木造かわらぶき2階建
主である建物の床面積 1階 80.00㎡
2階 70.00㎡
主である建物の新築年月日 平成20年11月1日
(登記された日は平成20年11月12日)
附属建物の種類 物置
附属建物の構造 木造かわらぶき平屋建
附属建物の床面積 30.00㎡

マンションの場合

マンションは法律上「区分建物」といいます。区分建物は一棟の建物ではありますが、各部屋に別個の所有権が存在するため、部屋ごとに登記簿謄本が作られます。(マンションの各部屋のことを法律上「専有部分」といいます。)
マンションの場合は下の画像のように表題部という枠が2つあるのが特徴です。
上の枠に「マンション全体の情報」、下の枠に「対象となる専有部分の情報」が記載されています。

マンション表題部

上の枠の表題部(建物全体の情報)から、このマンションが
特別区南都町一丁目3番1の土地の上に建っているひばりが丘一号館という名前の鉄筋コンクリート造2階建てのマンション」であるということが分かります。

下の枠の表題部(専有部分の情報)から読み取ることができる主要な情報は以下のとおりです。

家 屋 番 号 特別区南都町一丁目 3番1の101
建物の名称 R10
種   類 居宅
構   造 鉄筋コンクリート造1階建
床 面 積 1階部分 150.42㎡
新築年月日 平成20年11月7日
(登記された日は平成20年11月11日)
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 4分の1
用語説明
  1. 地目』とは土地の用途を示すものです。主な地目としては「宅地」「田」「畑」「公衆用道路」「山林」「雑種地」などがあります。
  2. 附属建物』とは主要な建物に付属する建物のことです。建物は一棟一棟がそれぞれ独立した建物であり、それぞれに登記されるのが原則です。しかし、居宅と物置など一体として利用されている場合には、主要な建物(居宅)に付属する建物として物置などを居宅の登記の中に取り込むことができます。この場合、「主である建物の表示」欄に居宅についての情報が記載され、「附属建物の表示」欄に物置についての情報が記載されることとなります。
  3. 家屋番号』とは建物を特定するための番号です。基本的には土地の地番と一致しますが、同じ敷地内に複数の建物が存在している場合は枝番で区別されます。

表題部に変更が生じたら

  • 家を増築した
  • 家を取り壊した
  • 土地を2つに分けた(分筆した)

など、表題部に記載された事項から変更があった場合は、変更登記の申請を行わなければなりません。所有者には変更があった時から1カ月以内に登記申請を行う義務があります。
ご自身で行う自信がないという方は、表題部登記の専門家である土地家屋調査士に依頼をしましょう。

まとめ

いかがでしたか?
表題部は、不動産の現況を知るため・不動産を特定するために重要な役割を持っている部分です。ぜひ一度、ご自身が所有されている不動産の登記簿謄本を確認してみてください。

次回は『権利部(甲区)』について詳しく解説いたします。
お読みいただきありがとうございました。