「登記簿謄本の読み方」シリーズ第2回は『権利部』についてです。
(第1回の『表題部』についてはこちらから)
目次
権利部とは
こちらは登記簿謄本の見本です。
②の枠が「権利部(甲区)」、③の枠が「権利部(乙区)」、④の枠が「共同担保目録」といいます。
権利部とは、その名の通り不動産の権利関係を示す部分です。
権利部は甲区と乙区の2つに分かれており、「甲区」に所有権に関する事項が記録され、「乙区」に所有権以外の権利に関する事項が記録されます。
共同担保目録は、乙区に記載される権利の中の『抵当権』と連動する項目となっています。
具体的にどのような事項が登記されるのか、次の章から詳しく見ていきましょう。
権利部(甲区)
所有権についての記載がされている『権利部(甲区)』は、不動産登記簿謄本の中でも最も重要な部分です。
こちらの画像は、登記簿謄本から「権利部(甲区)」の部分のみを切り取ったものです。
権利部(甲区)を見れば、不動産の登記上の所有者が誰であるかを確認することができます。
見本の順位番号1の欄をご確認ください。
順位番号 | 登記の目的 | 受付年月日・受付番号 | 権利者その他の事項 |
1 | 所有権保存 | 平成20年10月15日 第637号 |
所有者 特別区南都町一丁目1番1号 甲野太郎 |
この部分により、甲野太郎さんがこの不動産を取得し、平成20年10月15日に所有権保存登記の申請が受け付けられたということが分かります。
さらに順位番号2を見ていきましょう。
2 | 所有権移転 | 平成20年10月27日 第718号 |
原因 平成20年10月26日売買 所有者 特別区南都町一丁目5番5号 法務五郎 |
順位番号2には所有権移転と記載があり、所有者として法務五郎さんの名前があります。
この欄から、平成20年10月26日の売買により所有者が甲野太郎から法務五郎に変更した(登記申請は翌日27日に受付された)という情報を読み取ることができます。
この登記簿謄本の権利部(甲区)の記載はここで終わっているので、この不動産の登記上の現在の所有者は法務五郎さんとなります。
このように、権利部(甲区)の一番下に所有者として記載されている人が最新の所有者といえます。
権利部(乙区)
権利部の『乙区』には、所有権以外の権利(抵当権、賃借権、地上権など)に関する事項が記載されます。
上の画像をご覧ください。
順位番号1で抵当権設定登記が行われています。
法務五郎さんが南北銀行から4000万円を借り入れたという内容です。
権利部(甲区)とあわせて確認すると、法務五郎さんはこの不動産の所有者であり債務者でもあるということが分かります。
おとはさん
住宅ローンを完済したときには「抵当権抹消登記」が行われ、元々の抵当権設定登記の登記事項にはアンダーラインが引かれます。
アンダーラインが引かれている部分は既に消滅している権利だと一目で分かるようになっているのです。
共同担保目録
権利部(乙区)で抵当権が設定されている場合、その下に「共同担保目録」という枠が設けられていることが多くあります。
銀行で住宅ローンを組み一戸建てを購入するという場合、基本的に建物と土地の両方に抵当権は設定されます。
このように、一つの債権の担保として複数の不動産に抵当権が設定されることを共同担保といい、共同担保の関係を公示する一覧表のことを「共同担保目録」といいます。
上の画像(共同担保目録の見本)をご覧ください。
「特別区南都町一丁目101番の土地」と「特別区南都町一丁目101番地 家屋番号 101番の建物」が共同担保の関係であることが分かります。
このように、一つの不動産の登記簿謄本を見るだけで、共同担保関係にあるほかの不動産についての情報も得ることができるというのが共同担保目録の特徴です。
まとめ
抵当権抹消登記や相続登記は、やっていなくてもしばらくの間は支障がないため、ついつい放置してしまいがちな登記です。
しかし、放置していたことにより権利関係が複雑になり、登記をするのに莫大な時間と費用がかかる羽目になったという事例も多くあります。
そんな事態を未然に防ぐためにも、まずはご自宅やご実家の登記簿謄本を取得し
- 登記上の所有者は誰になっているのか
- 抹消されていない抵当権はないか
など、現在の権利関係の確認をされる機会を設けていただければと思います。
お読みいただきありがとうございました。